兼業農家の割合の推移とは?

兼業農家の割合の推移とは?

日本の農業の現状について、兼業で農業を営む方の割合がどのように変化しているのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
かつては、平日に別の仕事を持ちながら休日に田畑の手入れをするなど、兼業で農業を行う姿が日本の各地でごく一般的に見られました。
しかし、近年の公的な統計データを確認すると、その状況は数十年前とは大きく変化していることがわかります。
この記事では、農林水産省などが公表している信頼性の高いデータに基づき、農業現場の実態がどのように変わってきたのかを詳しく解説します。
この記事を読むことで、日本の農業構造が抱える現状を正しく理解し、今後の地域社会や農業の未来について考えるための明確な視点を持つことができます。

兼業農家は長期的に減少傾向にある

兼業農家は長期的に減少傾向にある

結論から申し上げますと、兼業農家の割合は長期的に低下する推移をたどっています。
かつては農家の大部分を占めていた兼業農家ですが、現在ではその比率が大きく変化しています。

直近の公的統計である2020年(令和2年)の農林業センサスによると、販売農家133万戸のうち、兼業農家は88.7万戸となっています。
割合に換算すると、兼業農家が占める比率は66.7%です。
依然として半数以上を占めているものの、過去のデータと比較すると明確な減少傾向が見て取れます。

特に顕著なのが、農業以外の収入を主とする「第2種兼業農家」の減少です。
一方で、専業農家の割合は相対的に上昇しており、兼業農家に大きく偏っていた日本の農業構造は、新たな段階へと移行していると考えられます。

日本の農業構造が変化している背景

日本の農業構造が変化している背景

兼業農家の割合が長期的に減少している背景には、いくつかの重要な要因が絡み合っています。
ここでは、なぜそのような推移をたどっているのか、具体的な理由を掘り下げて解説します。

高齢化によるリタイアと総農家数の減少

最大の要因として挙げられるのは、農業従事者の高齢化です。
農業以外の仕事を持ちながら休日に農作業を行うことは、体力的な負担が非常に大きい労働形態です。
年齢を重ねるにつれて兼業を維持することが難しくなり、離農を選択する方が増えていると考えられます。

これに伴い、日本全体の総農家数そのものも減少しています。
兼業農家の割合だけでなく、絶対数としての戸数も減っていることが、統計上の減少トレンドを決定づけています。

農業の法人化と規模拡大による専業化

もう一つの理由として、農業の専業化や法人化が進んでいることが挙げられます。
国や自治体は、効率的な農業経営を目指して、農地の集約や法人化を推進してきました。
その結果、兼業農家が手放した農地を、地域の専業農家や農業法人が引き継ぐケースが増加しています。

これにより、小規模な兼業農家が減る一方で、専業農家の相対的な割合が上昇するという構造変化が起きています。
農業をビジネスとして専業で成り立つようにする動きが、兼業割合の低下に直結していると考えられます。

後継者不足による世代交代の難しさ

かつては、親世代が専業または兼業で農業を行い、子世代が会社員として働きながら休日だけ手伝い、いずれは農地を継ぐというスタイルが一般的でした。
しかし、現代ではライフスタイルの変化や都市部への人口流出により、親の農地を継がない選択をする世代が増加しています。
兼業農家として経営を維持する後継者が不在となることで、一代限りで農業を終えるケースが多くなっていると思われます。

データから読み解く農業構造変化の現状

データから読み解く農業構造変化の現状

ここでは、より具体的な統計データを用いて、兼業農家の割合がどのような推移をたどっているのかを詳しく確認していきます。
時期を比較することで、変化の大きさが明確になります。

1985年と2020年の長期比較

日本の農業構造がどれほど変化したかを知るには、1985年と2020年のデータを比較するのが効果的です。
1985年当時の農家数の構成は以下の通りでした。

  • 専業農家:14.3%
  • 第1種兼業農家:17.7%
  • 第2種兼業農家:68.0%

このように、1985年時点では兼業農家(第1種と第2種の合計)が全体の85%以上を占めていました。
ところが、2020年の販売農家の構成は次のように変化しています。

  • 専業農家:33.3%
  • 第1種兼業農家:12.4%
  • 第2種兼業農家:54.3%

このデータから、兼業農家の割合が85%以上から66.7%へと大きく低下していることがわかります。
一方で、専業農家の割合は14.3%から33.3%へと倍増しており、構造が根本的に変わりつつあることが読み取れます。

第1種兼業農家と第2種兼業農家の違い

統計をより深く理解するためには、農林水産省が定義する「兼業農家」の分類を知っておく必要があります。
兼業農家は、主に以下の2つに区分されます。

  • 第1種兼業農家:農業所得が農外所得(その他の仕事による収入)を上回る農家
  • 第2種兼業農家:農外所得が農業所得を上回る農家

推移を見ると、特に減少が著しいのは第2種兼業農家です。
1985年には68.0%と大半を占めていた第2種兼業農家ですが、2020年には54.3%まで低下しています。
会社員など別の本業を持ちながら副業的に農業を営む層が、最も大きく減少していることがわかります。

調査時期による統計用語の違いに注意

農業に関するデータを確認する際、時期や調査によって使用される用語が変わる点には注意が必要です。
近年の統計では、「販売農家の専業・兼業」という区分のほかに、「農業経営体」という枠組みで「主業・準主業・副業的」という分類が用いられることが増えています。

例えば、2024年の農業白書では、農業経営体に占める準主業経営体と副業的経営体の割合が75.3%であると報告されています。
名称や母集団の定義が異なるため、単純に過去の「兼業農家」の数字と比較することはできませんが、副業的な立場で農業に関わる層が依然として一定の規模を持っていることも示されています。
長期的な推移を正確に把握するためには、同じ定義の数値を追っていくことが重要です。

これからの時代の農業の形

これからの時代の農業の形

ここまで、農林水産省などの公的データをもとに、兼業農家の割合がどのように推移しているのかを解説してきました。
まとめますと、1985年時点では全体の8割以上を占めていた兼業農家は、2020年には約66%にまで低下しています。
総農家数が減少する中で、体力的な限界や後継者不足から兼業農家がリタイアし、その農地を専業農家や法人が引き継ぐという流れが定着しています。
兼業偏重だった日本の農業は、より専業化・集約化された構造へと移行していると結論づけることができます。

新しい関わり方で農業を支える可能性

兼業農家の割合が減少しているという事実を見ると、少し寂しさを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、見方を変えれば、日本の農業がより持続可能でプロフェッショナルな産業へと生まれ変わろうとしている過渡期であるとも言えます。
また、近年では「週末農業」や「半農半X(エックス)」といった新しいライフスタイルが注目を集めており、従来の統計枠には収まらない多様な形で農業に関わる人々も増えています。
ご自身が農業に興味を持たれているのであれば、まずは市民農園や農業ボランティアなど、無理のない範囲から土に触れる生活を始めてみてはいかがでしょうか。
一人ひとりの小さな関心が、これからの日本の農業を支える大切な一歩になるはずです。