
「現在の日本において、農業だけで生計を立てている農家と、別の仕事と掛け持ちしている農家はそれぞれどれくらい存在するのだろうか」と疑問に思ったことはありませんか。
農業の実態を正しく把握するためには、公的な統計データに基づく正確な数値を読み解くことが不可欠です。
この記事では、最新の農林業センサスのデータを用いて、兼業農家の割合や専業農家との違い、さらには統計区分による見え方の違いについて詳しく解説します。
最後までお読みいただくことで、現在の農業を取り巻く状況や、ニュースなどで用いられるデータの正しい意味が明確に理解できるはずです。
農業ビジネスへの参入を検討している方や、地域の農業事情を深く知りたい方にとって、今後の判断材料となる有益な情報をお届けします。
最新の公的データが示す兼業農家の現状

結論から申し上げますと、2020年に実施された最新の農林業センサスにおいて、販売農家に占める兼業農家の割合は66.7%(約88.7万戸)です。
この数値から、日本の農家の約3分の2が、農業以外の仕事を持つ家族がいる状態であることが分かります。
一方で、農業のみに従事している専業農家の割合は33.3%となっています。
さらに兼業農家の内訳を見ていくと、農業収入よりも農業以外の収入が多い「第2種兼業農家」が54.3%を占めていることが大きな特徴です。
農業収入を主とする「第1種兼業農家」は12.4%にとどまっており、兼業農家の過半数は他産業での収入を生活の基盤としている状況が浮き彫りになっています。
このように、日本の農業においては「第2種兼業農家」が極めて大きな比重を占めていると言えます。
統計の定義と割合が変化している背景

前述した数値は「販売農家」を基準としたものですが、農業統計には様々な定義が存在し、どの基準を用いるかによって割合が異なります。
ここでは、なぜこのような割合になっているのか、その背景と統計の読み解き方を解説します。
販売農家と個人経営体の基準の違い
農林水産省の定義によると、兼業農家とは「世帯員の中に農業以外の仕事に従事する人が1人以上いる農家」を指します。
しかし、近年では従来の「兼業農家」という枠組みだけでなく、「個人経営体」という新しい整理で語られることが増えています。
「販売農家」を対象とした調査結果と、「個人経営体」を対象とした調査結果では母集団が異なるため、数字の見え方が変わってきます。
そのため、農業の実態を調べる際には、どの統計データを基準にしているのかを明記して確認することが重要となります。
第1種と第2種兼業農家の実態
兼業農家の中でも、第2種兼業農家が大部分を占めるのには明確な理由があります。
農業は天候や自然災害のリスクに左右されやすく、専業のみでは収入が不安定になる可能性があります。
そのため、より安定した現金収入を得るために、会社員などの給与所得を主な収入源としつつ、休日などを利用して農業を営むスタイルが定着しています。
これが、農業収入を主とする第1種兼業農家よりも、他産業の収入を主とする第2種兼業農家が多くなっている背景と考えられます。
長期的な視点で見られる低下傾向
過去のデータと比較すると、兼業農家の割合は長期的には低下傾向にあります。
2010年の販売農家に占める兼業農家の割合は約76%でしたが、2020年には66.7%へと下がっています。
これは、農業従事者の高齢化や後継者不足により、兼業農家自体が農業から引退して離農するケースが増加しているためと思われます。
実際、2020年の調査では、専業農家、第1種兼業農家、第2種兼業農家のいずれも戸数自体は減少していることが報告されています。
農業の実態を浮き彫りにする3つの指標

ここからは、より具体的な数字や分類を用いて、現在の農業構造に対する理解を深めていきます。
販売農家ベースの詳細な内訳
2020年農林業センサスにおける販売農家の内訳を整理すると、以下のようになります。
- 専業農家:33.3%(世帯員全員が農業のみに従事)
- 第1種兼業農家:12.4%(農業収入が他産業の収入よりも多い)
- 第2種兼業農家:54.3%(他産業の収入が農業収入よりも多い)
このように、販売農家を基準とした古い統計区分を用いた場合でも、最も一般的な日本の農家の姿は「給与所得などの安定収入を持ちながら農業を行う第2種兼業農家」であることが明確に示されています。
現在の実態に即した「個人経営体」の分類
近年、農業の実態をより正確に説明する際には、「主業・準主業・副業的経営体」という分類が用いられます。
2020年の農林業センサスにおいて、個人経営体をベースにした分類は以下の通りです。
- 主業経営体:農業所得が主で、65歳未満の農業従事者がいる経営体
- 準主業経営体:農外所得が主で、65歳未満の農業従事者がいる経営体
- 副業的経営体:65歳未満の農業従事者がいない経営体
この基準で見ると、個人経営体の中で副業的経営体が62%を占めていると整理されています。
ただし、この62%という数字は「販売農家ベース」の兼業農家割合とは母集団が異なるため、単純な比較はできない点に注意が必要です。
地域ごとに大きく異なる専業と兼業の比率
全国平均の数値だけでなく、地域差が大きい点も押さえておくべき重要なポイントです。
自治体が発表している独自の統計資料や解説資料を見ると、都市部近郊の農業地域と、中山間地域とでは専業農家と兼業農家の比率が大きく異なります。
例えば、都市部近郊では他産業への就業機会が多いため、第2種兼業農家の割合が全国平均よりも高くなる傾向があります。
一方で、大規模な農地が広がる一部の地域では、専業農家の割合が高くなるケースが確認されています。
地域ごとの具体的な事例を把握することは、その土地の農業特性を理解する上で非常に役立つと考えられます。
統計データから読み解く日本の農家の総括

ここまで解説してきたように、日本の農業における兼業農家の現状は、どの統計基準を用いるかによって見え方が変化します。
ブログ記事やニュースで最も代表的な指標として用いられるのは、「2020年農林業センサスの販売農家ベースで66.7%が兼業農家である」という公的数値です。
また、その大部分が第2種兼業農家(54.3%)であることや、長期的には割合が低下傾向にある(2010年の約76%から減少)という事実も、現在の農業を理解するための重要な要素となります。
情報を収集する際は、「販売農家」と「個人経営体」のどちらを基準にした数字なのかを確認することで、より正確な実態を把握することができます。
正確なデータをもとに農業の未来について考える
日本の農業は、高齢化や離農といった多くの課題に直面していますが、その一方で副業的に農業に関わる新しいスタイルも定着しつつあります。
もしあなたが、これから農業に関わってみたい、あるいは地域の農業ビジネスを支援したいと考えているのであれば、今回ご紹介したような公的な統計データを正しく理解することが第一歩となります。
数字の裏にある農家の生活実態や地域性を知ることは、より現実的で効果的な計画を立てるための強力な武器となるはずです。
ぜひ、こうした正確なデータをご自身の活動やビジネスの検討材料として活用し、次のステップへと踏み出してみてはいかがでしょうか。