現在の兼業農家割合はどれくらい?

現在の兼業農家割合はどれくらい?

昨今、農業の担い手不足や高齢化に関するニュースを耳にすることが増えました。
その中で、「日本の農家は、農業だけで生計を立てている人と、他の仕事と両立している人のどちらが多いのだろうか」と疑問を持たれたことはないでしょうか。

テレビや新聞では様々なデータが紹介されますが、農業の実態を正確に把握するためには、国が公表している客観的な統計区分を正しく理解することが極めて重要です。
この記事をお読みいただくことで、現在の農業構造の実態や、兼業を中心とした多様な働き方が日本の農業にどのような影響を与えているのかが明確になります。
今後の農業との関わり方や、地域社会のあり方を考える上での重要な視点を得ることができると考えられます。

農業経営体の大部分は副業や兼業が占めています

農業経営体の大部分は副業や兼業が占めています

農林水産省が公表している最新の農林業センサス関連資料などによると、現在の日本における農業経営体のうち、農業以外の収入を主とする世帯や、副業的に農業を営む世帯が全体の大部分を占めていることが分かっています。
具体的には、これらに該当する経営体の合計割合が約75%(7割以上)に達するとされています。

これは、農業を本業として生計を立てているいわゆる「主業農家」が少数派であり、大半の農家が何らかの形で農業以外の収入源を持っていることを意味します。
一般的に語られる兼業農家割合は非常に高く、現代の日本農業において、兼業や副業という形態は単なる例外ではなく、標準的な農業の担い手の一形態として位置づけられています。
一方で、農業全体の担い手(基幹的農業従事者)の数は約103.6万人まで減少しており、農家の高齢化と規模の縮小が同時に進行している点にも留意が必要です。

統計上の区分と兼業化が進行する背景

統計上の区分と兼業化が進行する背景

なぜこれほどまでに、兼業や副業として農業に関わる割合が高いのでしょうか。
その理由を深く理解するためには、まず統計上の正確な定義を把握し、その上で社会構造の変化に目を向ける必要があります。

「兼業農家」の正確な定義と3つの分類

日常会話で使われる「兼業農家」とは、一般的に「家族のだれかが農業以外の仕事で収入を得ている農家」を指します。
しかし、国の基幹統計である農林業センサスでは、より実態に即した分析を行うために、主業農家・準主業農家・副業的農家という3つの区分が用いられます。

  • 主業農家:農業所得が主であり、1年のうち60日以上農業に従事する65歳未満の世帯員がいる経営体です。
  • 準主業農家:農外所得が主ですが、65歳未満の農業専従者がいる経営体です。
  • 副業的農家:65歳未満の農業専従者がいない(高齢者のみ、あるいは休日のみ従事する等)経営体です。

実務上、兼業農家割合について議論する際は、このうちの「準主業農家」と「副業的農家」を合わせた比率を見るのが最も正確であるとされています。
現在、特に副業的農家が依然として多数派を占めており、構成比の約65%前後を推移しているという分析も存在します。

高齢化と安定収入を求める構造的な要因

兼業や副業の割合が高い理由として、農業従事者の高齢化が大きく関わっていると考えられます。
65歳以上の高齢者が年金を受給しながら、先祖代々の農地を守るために無理のない範囲で農業を続けるケースが多く見られます。
このような世帯は、統計上「副業的農家」に分類されることになります。

また、農業は天候や市場価格の変動による収入リスクが伴う産業です。
そのため、現役世代であっても、会社員としての安定した給与所得を得ながら、週末や早朝を利用して農業を行うスタイルを選択する方が増えています。
農業機械の進化や栽培技術の向上により、少ない労働時間でも一定の収穫を得やすくなったことも、この傾向を後押ししていると思われます。

実社会で見られる多様な農業の担い手像

実社会で見られる多様な農業の担い手像

統計データだけでなく、実際の社会においてどのような形で人々が農業に関わっているのか、具体的なケースをいくつかご紹介します。
これらを知ることで、数字の背景にある実生活のイメージが湧きやすくなるはずです。

週末を利用して小規模に営む会社員のケース

平日は一般企業で会社員として働き、週末や祝日を利用して農業を行うライフスタイルです。
このケースは、生活の基盤となる収入が確保されているため、農作物の不作や価格下落といった経営リスクに対する耐性が非常に高いという特徴があります。
主に自家消費用の野菜を栽培し、余剰分を直売所やインターネットで販売するような小規模な経営が多く、統計上は「副業的農家」に該当することが多いと考えられます。
自然と触れ合うことによるストレス軽減や、食への関心の高まりから、若年層や中高年層を中心に人気を集めている働き方です。

定年退職後に地域の農地を守る高齢者のケース

長年別の職業に就いていた方が、定年退職を機に実家の農地を継ぎ、本格的に農業を始めるケースです。
年金を主な収入源としつつ、自らの健康維持や生きがいとして農作業に取り組みます。
このような形態も、専従者が65歳以上であれば「副業的農家」として分類されます。
日本の多くの農村地域において、地域の景観や農地を荒廃から守る重要な役割を担っており、地域コミュニティの維持に不可欠な存在となっています。

多様な収入源を組み合わせる新しい就農のケース

近年では、「半農半X」と呼ばれるような、農業と別の専門的な仕事(ITエンジニア、デザイナー、ライターなど)を組み合わせる働き方も注目されています。
自身の技術や資格を活かしてフリーランスとして働きながら、一定の時間を農業に充てるというスタイルです。
こうした働き方は、事業の比重によって「準主業農家」や「副業的農家」に分類されますが、従来の「やむを得ず兼業する」というネガティブなイメージとは異なり、より積極的で豊かなライフスタイルの選択として捉えられています。

多様な働き方がこれからの日本の農地を維持します

多様な働き方がこれからの日本の農地を維持します

ここまで、現在の日本における農業の構成比率や、その背景にある社会的な要因について解説してきました。
データが示す通り、日本の農業経営体の大部分は、農業以外の収入を持つ世帯や副業的な世帯によって占められています。
農家数全体が減少トレンドにある中で、割合(比率)だけでなく、実数としての農家戸数の減少にも目を向ける必要があります。
しかし同時に、この構造は決して悲観すべきものばかりではなく、多様な人材がそれぞれのライフスタイルに合わせて農地に関わっている証拠でもあります。

農業は、食料を生産するだけでなく、国土の保全や豊かな自然環境の維持といった多面的な機能を持っています。
少数の大規模な「主業農家」が生産の効率化を牽引する一方で、多数の「準主業農家」や「副業的農家」が地域に根ざし、細やかな農地管理を行っていくという両輪の構造が、今後の日本農業のスタンダードになっていくと考えられます。

もし、あなたが将来的に農業に関わることを少しでも検討されているのであれば、いきなりすべての生活を農業に懸ける専業農家を目指す必要はありません。
現在の仕事や生活基盤を維持しながら、まずは週末の数時間だけ農地を借りてみるなど、副業的なアプローチから始めることは非常に現実的で理にかなった選択肢です。
ご自身の無理のないペースで、日本の大切な土と緑に触れる第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。