兼業農家の確定申告は必要?

兼業農家の確定申告は必要?

兼業農家として農業を営みながら、別の仕事でも収入を得ている場合、税金の手続きについて迷うことはありませんか。
農業による収入は、一般的な給与のように会社で年末調整が行われないため、ご自身で税務署へ手続きをする必要があるのか不安に感じられる方も多いと思われます。
この記事では、どのようなケースで手続きが必要になるのか、会社員とフリーランスでのルールの違い、そして損益通算や青色申告による節税の可能性について詳しく解説します。
最後までお読みいただくことで、ご自身の状況に合わせた正しい手続きの判断ができるようになり、将来の不安をなくして農業に専念できる環境を整えることができます。

ご自身の状況と所得額によって手続きの要否が決まります

ご自身の状況と所得額によって手続きの要否が決まります
農業のほかに、会社員・公務員・パート・フリーランスなど別の仕事で収入を得ている兼業農家の場合、確定申告が必要かどうかは主に2つの要素で決まります。
それは、「給与が年末調整されているか」と「農業を含む給与以外の所得がいくらか」です。
給与所得は勤務先の年末調整で税額がほぼ完結しますが、農業収入は自営業扱いとなり年末調整の対象外となるため、基本的にはご自身で手続きをして税額を確定させる必要があります。
ただし、全ての方が申告しなければならないわけではなく、本業の働き方(会社員かフリーランスか)によって設けられている基準額を超えた場合にのみ、義務が発生します。

働き方によって申告が必要な基準額が異なる理由

働き方によって申告が必要な基準額が異なる理由
兼業農家の確定申告において、最も注意すべき点は、ご自身の働き方によって適用されるルールが変わることです。
特に2025年分以降の手続きでは、この違いを正確に理解しておくことが重要とされています。

会社員は「20万円ルール」が適用されます

サラリーマンやパートなどとして給与所得があり、勤務先で年末調整が済んでいる場合、基本的には「20万円ルール」が適用されます。
具体的には、給与所得と退職所得を除く、農業所得などの合計が20万円を超えた場合に確定申告が必要となります。
逆に言えば、農業所得が20万円以下であり、他の副業もなく、給与が年末調整済みであれば、原則として所得税の確定申告は不要と考えられます。
また、特例として、年金収入が400万円以下かつ農業所得が20万円以下の年金受給者の方も、原則として申告不要とされるケースがあります。

フリーランスは「95万円ライン」に変わります

一方で、フリーランスや個人事業主として事業所得があり、さらに農業も営んでいる兼業農家の場合は、会社員のような20万円ルールはそのまま使えません。
事業所得、農業所得、雑所得などのすべての合計額で判断することになります。
2025年分以降は、これらの所得の合計が95万円を超えると確定申告が必要とされています。

基礎控除改正による影響と注意点

フリーランス兼業農家の基準が「95万円ライン」となるのは、所得税法上の基礎控除の額や住民税の非課税限度額の見直しに連動しているためと説明されています。
2024年分まではこの基準が48万円でしたが、法改正に伴い変更される点には十分な注意が必要です。
フリーランスとして事業所得がある以上、基本的にはご自身で手続きを行うことが前提となり、そこに農業の所得をどのように合算して計算するかが実務上の重要なポイントになります。

対象は「売上」ではなく「所得」です

基準額を計算する際によく誤解されるのが、金額のベースが「売上(収入)」なのか「所得」なのかという点です。
ここでの基準となるのは、農業に関する収入から必要経費を差し引いた後の金額である「所得」です。
農機具の購入費、肥料代、種苗費、燃料費、農地の賃借料などを適切に経費として計上することで、利益を圧縮することが可能です。
また、農業所得だけでなく、雑所得や事業所得など給与以外のすべての所得を合算して判定するという点も忘れないようにしてください。

申告の要否が分かれる3つの具体的なケース

申告の要否が分かれる3つの具体的なケース
ここからは、兼業農家が確定申告をすべき典型的なケースを3つご紹介します。
ご自身の状況と照らし合わせて確認してみてください。

ケース1:農業所得が基準額を超えて利益が出た場合

最も基本的なケースは、農業による利益が前述の基準額(会社員なら20万円、フリーランスなら95万円)を超えた場合です。
例えば、会社員の方が週末に農業を行い、年間で農作物の売上が100万円、肥料や農機具などの経費が70万円かかったとします。
この場合、農業所得は30万円(100万円-70万円)となります。
給与以外の所得が20万円を超えているため、所得税の確定申告が必要となります。

ケース2:年末調整されていない給与がある場合

本業が会社員であっても、勤務先で年末調整が行われていない場合は、ご自身での手続きが必須となります。
具体的には以下のようなケースが該当します。
  • 年収が2,000万円を超えており、会社の年末調整の対象外となっている方
  • 複数の勤務先から給与を得ており、メインの職場以外で年末調整されていない給与がある方
これらの場合は、農業所得の金額が20万円以下であるかどうかに関わらず、すべての所得を合算してご自身で申告を行わなければなりません。

ケース3:農業の赤字を給与と相殺(損益通算)したい場合

農業所得は、原則として事業所得として扱われます。
そのため、農業で赤字が出てしまった場合、その損失を会社からの給与所得と相殺(損益通算)して、全体の税金を減らすことが可能な場合があります。
例えば、給与所得が500万円あり、天候不良などで農業所得がマイナス50万円になってしまった場合、確定申告をすることで全体の所得を450万円に圧縮できます。
結果として勤務先で納めすぎた税金が還付される可能性があるため、節税目的であえて手続きを行う会社員兼業農家の方もいらっしゃいます。

手続きを有利に進めるための青色申告と必要書類

手続きを有利に進めるための青色申告と必要書類
農業を事業として継続的に行っていくのであれば、税制上の様々な優遇措置を受けられる「青色申告」を検討されることをお勧めします。
ここでは、そのメリットと準備すべき事柄について解説します。

青色申告を活用するメリット

兼業農家であっても、原則的に農業を事業所得として申告したほうが有利になることが多いとされています。
青色申告を選択することで、以下のような大きなメリットが得られます。
  • 最大65万円(簡易な記帳にとどまる場合は10万円)の青色申告特別控除が受けられる
  • 赤字が出た場合、その損失を翌年以降に最大3年間繰り越すことができる
  • 一定の条件を満たせば、家族に支払う給与を必要経費に算入できる
これらの制度を最大限に活用することで、節税効果を大幅に高めることが期待できます。

手続きの流れと主な必要書類

これから手続きを始める方は、以下の流れで準備を進めてください。
まず、農業を事業として行う場合、管轄の税務署へ「個人事業の開業届出」を提出する必要があります。
また、お住まいの地域によっては、都道府県税事務所や市区町村へ「事業開始等申告書」の提出が別途求められる自治体もあるため、事前の確認が必要です。
確定申告の時期に準備すべき主な書類は以下のとおりです。
  • 確定申告書(AまたはB)
  • 収支内訳書または青色申告決算書(農業所得用)
  • 給与所得の源泉徴収票(会社員の場合)
  • 経費に関する領収書や日々の帳簿類
現在では、e-Taxを利用した電子申告が強く推奨されています。
農業向けの会計ソフトを使用して日々の取引を集計し、そのデータをもとにe-Taxで申告書を作成・提出する運用がもっとも効率的と思われます。

正しい知識で安心な農業経営を

兼業農家の確定申告は、会社員かフリーランスかによって適用されるルールが異なり、特に2025年分以降は基準額の変更に注意が必要です。
会社員であれば農業などの所得が20万円を超えるかどうか、フリーランスであれば合計所得が95万円を超えるかどうかが、手続きの要否を見極める重要な境界線となります。
また、仮に基準額を下回っていたとしても、損益通算や青色申告の特別控除を利用することで、税金面でのメリットを得られる可能性があります。

まずは、ご自身の一年間の収入と経費の領収書をしっかりと整理し、実際の所得額がいくらになるのかを正確に把握することから始めてみてください。
必要に応じて管轄の税務署や税理士などの専門家に相談しながら正しい手続きを行うことで、税務面での不安を取り除くことができます。
クリアな状態でより充実した農業ライフを送るために、ぜひ、今日から少しずつ書類の整理や帳簿付けの準備を始めてみてはいかがでしょうか。