兼業農家ってどんな働き方なの?

兼業農家ってどんな働き方なの?

近年、働き方の多様化が進む中で、農業と別の仕事を両立するライフスタイルに関心を持つ方が増えています。
「農業を始めてみたいけれど、完全に仕事をやめるのは不安だ」「親の農地を継ぐべきか迷っている」といった悩みをお持ちではないでしょうか。
この記事では、複数の収入源を持つ働き方について、基本的な知識や最新の動向、そしてメリットと課題を客観的に解説します。
本業の収入を維持しながら農業に関わる仕組みを知ることで、今後のキャリアや生活の選択肢が大きく広がる可能性があります。
最後までお読みいただくことで、ご自身のライフスタイルに合った無理のない農業との関わり方が見えてくると思われます。

農業と別の仕事を両立する働き方が注目されています

農業と別の仕事を両立する働き方が注目されています
現代の日本の農業構造を語るうえで、農業とそれ以外の仕事を並行して行う働き方は非常に重要な位置を占めています。
これまで農業といえば、それ一本で生計を立てる専業のイメージが強かったかもしれません。
しかし、実際には農業以外の仕事からも収入を得ながら、複数の収入源を持つ経営スタイルが広く定着しています。
高度経済成長期以降、農村から都市部への就業が増加したことで、本業を持ちながら自分の田畑を耕す世帯が拡大してきました。
2010年時点のデータでは、全農家のうち約76%以上が複数の収入源を持つ世帯であったとされています。
近年では、働き方改革や副業の解禁を背景に、「副業としての農業」という新しい形での関わり方が社会的な関心を集めています。

収入の安定とリスク分散が可能な仕組みです

収入の安定とリスク分散が可能な仕組みです
なぜこのような働き方が古くから存在し、現在でも多くの方に選ばれているのでしょうか。
その背景には、経済的なメリットと社会構造の変化が深く関係していると考えられます。

基本的な定義と2つの種類について

農林水産省や農林業センサスなどの行政上の定義では、「世帯員の中に農業以外の仕事に従事している人が1人以上いる農家」とされています。
この働き方は、農業収入とそれ以外の収入のどちらがメインであるかによって、大きく2つの種類に分類されます。
  • 第一種:農業所得がその他の所得よりも多い経営スタイルです。農業がメインであり、他の仕事は副業的な位置付けとなります。
  • 第二種:農業以外の収入が主であり、農業所得が従となる経営スタイルです。
一般的なイメージとして広まっている「本業の会社員+週末の農業」という形は、第二種に分類されることが多いと言えます。
なお、農林水産省の統計上では2020年に従来の区分が廃止され、「主業」「準主業」「副業的」などの新しい区分に再整理されたとされています。
しかし、メディアや実務の現場では、現在でも一般的な呼称として広く使われ定着しています。

収入の安定とライフスタイルの向上という利点

最大のメリットは、収入の安定とリスク分散が図れる点にあります。
農業収入と本業収入の二本柱で生活を支えられるため、農産物の価格変動や天候不順といった農業特有のリスクに対して強い経営基盤を持つことができます。
また、親の農地を引き継ぐ際にも、本業の収入があることで「農業を完全にやめずに維持する」という選択肢を取りやすくなります。
さらに、自分の食べるものを自分で作る喜びや、自然の中で体を動かす仕事は、心身の健康や充実感につながると指摘する専門家もいます。

体力的な負担や税務処理などの課題

一方で、複数の仕事を持つことによる課題も存在します。
本業に加えて農作業を行うため、特に農繁期には休みがほとんどなくなるなど、時間と体力の負担が大きくなる傾向があります。
また、農業に割ける時間が限られることから、大規模化や専門性の高い経営へ踏み出しにくく、農業単体での収入は限定的になりがちです。
さらに、給与所得と農業所得など複数の所得を扱う必要があるため、確定申告や税務処理が複雑になることも留意すべき点とされています。

多様な関わり方を示す3つの実践例

多様な関わり方を示す3つの実践例
実際にどのような形で農業と別の仕事を両立しているのか、代表的な実践例を3つご紹介します。
ご自身の状況に近いものがあるか、ぜひ参考にしてみてください。

会社員と週末農業を組み合わせるスタイル

最も一般的なのが、平日は会社員として働き、週末や祝日を利用して農作業を行うスタイルです。
このケースでは、本業の給与収入が生活の基盤となります。
農業による収入は「副収入」および「自家消費による食費の軽減」という位置付けになるケースが多く見受けられます。
ある分析では、農業収入1,000万円以下の層において、本業と農業を組み合わせたパラレルワーク型が多数派であるとされています。
週末の時間を有効活用することで、無理なく自然と触れ合いながら安定した生活を送ることが可能です。

都市部と地方を行き来する二拠点生活スタイル

近年注目されているのが、都市部に生活拠点を置きながら、週末や特定の期間だけ地方の農村を訪れて農業を行う二拠点生活です。
テレワークの普及により、働く場所の自由度が高まったことがこの動きを後押ししています。
都市住民が地方創生や環境保全の観点から農業に関わる形として期待されており、「半農半X」と呼ばれる多様な価値観を大切にするライフスタイルとしても語られています。
このスタイルを実践するAさんのような方々は、都市の利便性と地方の豊かな自然環境の双方を享受しています。

小規模向けの支援制度を活用したスタートアップ

農業を始めるにあたっては、機械の導入や施設の整備に一定の初期費用がかかります。
しかし近年では、各自治体や国の制度において、小規模な経営であっても活用できる補助金や支援制度が充実してきています。
2025年版の制度まとめなどでも、環境保全型農業の推進や小規模事業者を対象とした支援策が複数存在するとされています。
これらの制度を上手く活用することで、初期投資のリスクを抑えながら、安全に農業ビジネスをスタートさせる事例が増加しています。

リスクを抑えて農業に関わる有効な選択肢です

リスクを抑えて農業に関わる有効な選択肢です
農業とそれ以外の仕事を両立する働き方は、単なる収入補填の手段ではなく、現代の多様な価値観に適合した柔軟なライフスタイルです。
本業による安定した生活基盤を持ちながら、天候や市場価格の変動といった農業特有のリスクを最小限に抑えることができます。
また、先祖代々の農地を守り継ぎ、自然と触れ合うことで得られる心身の充実感は、お金には代えがたい大きなメリットと言えます。
時間的な制約や税務処理の負担といった課題はあるものの、事前の計画や支援制度の活用によって十分に乗り越えることが可能です。
日本農業の新たな担い手として、この「二刀流」のスタイルは今後ますます高く評価されていくと考えられます。

ご自身のペースで新しいライフスタイルへ

「農業に興味はあるけれど、いきなり全てを変えるのは怖い」と感じるのは、非常に自然なことです。
まずはプランターでの家庭菜園や、週末だけ通える市民農園など、負担の少ない範囲から土に触れてみてはいかがでしょうか。
本格的な経営を目指す場合でも、現在の仕事を続けながら少しずつ規模を拡大していくことが、成功への堅実なステップとなります。
各自治体の農業支援窓口では、個別の状況に応じた相談を受け付けていることが多いです。
ご自身やご家族にとって無理のない範囲で、豊かな自然と共に歩む新しい働き方へ、ぜひ小さな一歩を踏み出してみてください。