
都会の喧騒を離れ、自然豊かな環境で農業を始めたいと考える方が近年増加傾向にあります。
しかし、いざ農業を仕事にしようとしたとき、「どの地域で始めればよいのか」「未経験からでも生計を立てられるのか」「どのような公的支援が用意されているのか」など、多くの疑問や不安が生じると思われます。
この記事では、全国的にも高い注目を集めている山梨県に焦点を当て、その人気の背景や充実した支援体制、そして実際に農業を始めるための具体的なステップを客観的なデータとともに詳しく解説します。
最後までお読みいただくことで、農業への第一歩を踏み出すための明確な道筋が見え、安心して情報収集や準備を進められるようになるはずです。
山梨県は全国トップクラスの新規就農人気県とされています

山梨県における新規自営就農者は、かつて年間50人前後で横ばいの状態が続いていましたが、国や県、市町村による支援策の充実を背景に、平成18年以降は明確な増加傾向に転じました。
近年のデータによると、年間300人以上の新規就農者が6年連続で誕生しているとされており、全国的に見ても非常に高い水準を維持しています。
特に2022年度の新規就農者数は過去最多となる331人を記録しており、この10年余りで約1.8倍に増加したと報告されています。
また、就農形態も多様化しており、家族の農業を継ぐ「親元就農」だけでなく、農家出身ではない「新規参入者」や「Uターン・定年帰農」がほぼ同じ割合で増加しているのが特徴です。
さらに、6次産業化の推進や企業の農業参入に伴い、農業法人に雇用されて働く「雇用就農」の割合も増えており、多種多様な人材が山梨の農業を支え始めていると考えられます。
なぜ山梨県が就農先として選ばれているのか

果樹王国としての圧倒的なブランド力と高収益性
山梨県が新規就農者に選ばれる最大の理由の一つは、果樹栽培を中心とした高付加価値農業が確立されている点にあるとされています。
シャインマスカットをはじめとするブドウや、桃、すももなどの果樹は、全国的にも非常に高いブランド力を持っています。
これらの果樹は一般的な野菜などと比較して単価が高く設定できるため、比較的少ない面積でも安定した収益を上げやすいというメリットがあります。
経営が軌道に乗るまでのハードルが高いとされる新規就農において、収益性の高い作物を選択できる環境は、就農希望者にとって大きな魅力になっていると考えられます。
首都圏からの良好なアクセスと移住のしやすさ
甲府市を中心とする山梨県の主要エリアは、東京圏からのアクセスが非常に良好であることも重要な要因とされています。
特急列車や高速道路を利用すれば都心から1時間半から2時間程度で移動できるため、完全に都市部と切り離された生活ではなく、都市との程よい距離感を保ちながら農業に取り組める環境が整っています。
「新規就農相談会inやまなし」などのイベントでも、移住と就農をセットで検討する方が多く参加しており、生活環境の利便性を損なわずに自然豊かな土地で働けることが、移住を伴う新規参入者の背中を押していると思われます。
有機・環境配慮型農業への柔軟な受け入れ体制
近年は、食の安全や環境問題への関心の高まりから、有機農業を志向する新規就農者が増加しています。
山梨県では果樹だけでなく、水稲や畜産、花き、そして野菜など多様な農畜産物が生産されており、特に野菜分野において有機農業を希望する方への受け入れ体制が整備されつつあります。
県や関係する市町村が連携し、環境に配慮した農業を学び実践できる環境を整えていることが、幅広い価値観を持つ多様な人材を惹きつける要因の一つになっていると推測されます。
山梨県で新規就農するためのステップと具体的な支援制度

ゼロから始める就農への6つのステップ
未経験から農業を始める場合、適切な順序で準備を進めることが重要です。
JAグループ山梨担い手サポートセンターでは、農業を始めたい方向けに以下の6つのステップを推奨しています。
- STEP1:情報収集(農業や農村への理解を深め、家族の同意をしっかりと得る)
- STEP2:相談窓口の活用(県やJAの相談窓口に足を運び、自身の希望や方向性を相談する)
- STEP3:技術習得(就農研修や農業大学校に入学し、栽培技術と経営ノウハウを体系的に学ぶ)
- STEP4:就農計画の作成(生産・販売・資金計画を立案し、市町村長から「青年等就農計画」の認定を受ける)
- STEP5:基盤の確保(農地、機械・施設、住宅を確保し、必要な資金調達を行う)
- STEP6:就農と地域への定着(生産を開始し、地域の生産組織やJAに加入して技術・経営の相談を継続する)
これらのステップを一つひとつ着実にクリアしていくことで、経営リスクを抑えながら自立した農業者へと成長できると考えられます。
初期投資を軽減する手厚い補助金制度
農業を始めるにあたっては、農地の取得や農機具の購入など、多額の初期投資が必要となります。
しかし、山梨県内では国や市町村による手厚い資金支援制度が用意されており、これらを活用することで金銭的な負担を大幅に軽減できるとされています。
代表的な支援制度は以下の通りです。
- 国の制度:「青年等就農計画」の認定を受けた「認定新規就農者」は、農業次世代人材投資資金(経営開始型)や無利子の青年等就農資金、経営体育成支援事業などの利用が可能になります。
- 中央市の事例:18歳から45歳の青年や、特定の技能を持つ中高年齢者などを対象に、青年等就農計画の認定を通じて関係機関が密に連携し、地域ぐるみの支援を行っています。
- 甲斐市の事例:「やまなし新規就農アシスト事業」として、就農後5年以内の独立・自営就農者が農業機械や施設をリース方式で導入する際、その費用の一部を市が補助する制度が設けられています。
不安を解消する多角的な相談サポート窓口
就農に向けた準備期間から就農後まで、様々な悩みに対応するための窓口が県内各地に設置されています。
山梨県農業振興公社が運営する「山梨県就農支援センター」は新規就農全般の総合的な相談窓口として機能しており、研修先の紹介や農地・資金情報の提供を行っています。
また、山梨県農政部の各農務事務所(中北・峡東・峡南・富士・東部など)では、地域ごとの普及センターが栽培技術や経営に関する専門的なアドバイスを提供しています。
さらに、JAグループ山梨担い手サポートセンターや山梨県農業会議などでも、資金調達や農業法人への就職相談など、それぞれのニーズに合わせたきめ細やかなサポートが展開されています。
山梨での新規就農に向けた要点整理

これまでに解説した通り、山梨県は果樹を中心とした高いブランド力と収益性、首都圏からの良好なアクセスを背景に、全国でも屈指の新規就農人気県となっています。
年間300人以上が就農する環境は、同じ志を持つ若手農家同士のネットワーク作りにも有利に働くと考えられます。
また、国や県、各市町村が連携した手厚い補助金制度や、技術習得から農地確保までをサポートする相談窓口が充実しているため、未経験からでも計画的に準備を進めることが可能です。
情報収集から始まり、しっかりとした就農計画を立てて認定を受けることが、成功への最も確実なルートであると言えます。
豊かな自然環境での農業実現に向けて
全く新しい土地で、これまで経験のない農業という職業に挑戦することは、決して簡単なことではないと思われます。
しかし、山梨県には新規参入者を温かく迎え入れ、自立するまで伴走してくれる確かな支援体制が整っています。
「自然の中で働きたい」「自分で育てた作物で生計を立てたい」という思いがあるのなら、まずは一度、山梨県で開催される就農相談会や現地の窓口へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
専門の相談員に思いを伝えることが、あなたの理想とするライフスタイルの実現に向けた、大きな第一歩となるはずです。