
しかし、いざ始める前に「実際のところ、長く続けられるのだろうか」と不安を抱くことはないでしょうか。
インターネットなどで「辞める人が多い」と耳にすると、大きな決断に迷いが生じるかもしれません。
本記事では、農林水産省の最新データに基づき、新規就農者が直面する現実とその背景について詳しく解説します。
この記事をお読みいただくことで、失敗しやすいポイントを事前に把握し、安定した農業経営を実現するための具体的な対策を知ることができます。
就農後3~5年以内で約2割が離農しています

新規就農者とは、非農家出身で新たに農業に参入する方や、親元などで家族経営を継ぐ方を指します。
2023年の新規就農者の総数は43,460人となっており、その内訳は自営就農が30,330人、農業法人などに雇用される雇用就農が9,300人、全くの新規参入が3,830人です。
この新規就農者の数は、ピークであった2007年の73,460人から約40.8%も減少しており、近年は減少傾向が加速しているとされています。
また、日本の農業全体に目を向けると、高齢化と担い手不足が深刻な問題となっています。
2025年農林業センサスのデータでは、基幹的農業従事者が1985年の346万人から102万人へと約70%も減少しました。
さらに、現在の農業従事者のうち、70歳以上が55%、65歳以上が69.5%を占めている状況です。
年間約6.5万人もの方が離農していく中で、49歳以下の若手新規就農者は年間1.6万人程度にとどまっており、離農者の減少スピードに新規就農が全く追いついていないことが明確に示されています。
なぜ多くの人が農業から離れてしまうのか

それぞれの理由について、実際のデータや現場の状況を踏まえて解説します。
予想を下回る農業所得の低迷
離農理由として最も多く挙げられるのが、収入の低迷と初期投資の回収難です。2026年に向けた農林水産省のデータによると、国から認められた「認定新規就農者」であっても、世帯農業所得の平均は452万円にとどまっています。
この数字は全国の他産業を含む平均所得の約半分程度であり、農業だけで生計を立てることの厳しさを物語っています。
さらに、認定新規就農者の平均収入自体は1,313万円あるものの、肥料代や農機具の維持費などの多額の経費を差し引くと、手元に残る所得は少なくなってしまいます。
また、国や自治体からの交付金に依存しているケースも顕著であり、補助期間が終了した途端に資金繰りが悪化し、撤退を余儀なくされる方が後を絶たないとされています。
作物の違いによる収入差と技術習得の難しさ
2つ目の理由は、栽培する作物による収入格差と、安定した収量を確保するための技術習得が容易ではない点です。例えば、同じ認定新規就農者でも、スイカ農家は平均457万円、稲作農家は平均452万円の所得を得ている一方で、果物類を栽培する農家の所得は200万円台にとどまるなど、選択する作物によって収入に大きな差が生じています。
農業は自然を相手にするビジネスであり、天候不順や病害虫の発生など、予期せぬトラブルがつきものです。
経験の浅い新規就農者は、こうしたトラブルに適切に対処する技術やノウハウが不足していることが多く、収穫量が激減して収入不足に直面する可能性があります。
地域コミュニティへの適応と人間関係
3つ目の理由は、農村地域特有のコミュニティに馴染めず、孤立してしまうケースです。農業は自分の畑だけで完結するものではなく、水路の管理や農道の草刈りなど、地域住民との共同作業が不可欠です。
非農家から新規参入した方の中には、地域のルールやしきたり、近隣の農家とのコミュニケーションに戸惑い、人間関係でつまずいてしまう方も少なくありません。
地域社会での孤立は、農業を続けていく上での大きな精神的ストレスとなり、結果として農業そのものを辞めてしまう大きな要因となっています。
離農を防ぎ安定経営を続けるための3つの対策

ここでは、失敗を回避するための具体的な対策を3つご紹介します。
借金を極力抑えたスモールスタート
農業を始める際、最新の農機具や立派な設備を整えようとすると、数千万円単位の初期投資が必要になる場合があります。しかし、多額の借金を抱えてスタートすることは、収入が不安定な就農初期において非常に高いリスクとなります。
農業を経験された方の声などに基づく知見では、離農を回避するためには借金を極力避けることが重要であると指摘されています。
まずは中古の農機具を活用したり、初期投資が少なくて済む作物を選択したりするなど、自己資金の範囲内で小さく始める「スモールスタート」を心がけることが推奨されます。
少しずつ規模を拡大していくことで、金銭的なプレッシャーを減らし、長く事業を継続することが可能になります。
農業以外の収入源を持つ副業の併用
就農してすぐに農業だけで十分な生活費を稼ぎ出すのは至難の業です。作物が育ち、安定して出荷できるようになるまでには時間がかかります。
そのため、農業の収入が安定するまでの数年間は、別の仕事と並行する副業スタイルを取り入れるのも一つの有効な手段です。
例えば、冬場の農閑期に別の仕事を行ったり、在宅でできる業務を持ったりすることで、当面の生活費を確保することができます。
生活基盤が安定していれば、焦って無理な投資や栽培計画を立てる必要がなくなり、精神的な余裕を持って農業に向き合うことができます。
独立前に農業法人で雇用就農を経験する
全くの未経験からいきなり独立自営で農業を始める(2023年は2,590人)のは、ハードルが非常に高いと言えます。近年注目されているのが、まずは農業法人などに就職して給与を得ながら農業を行う「雇用就農」という形態です。
2023年の雇用就農者は9,300人となっており、政府の政策としても農業法人の雇用拡大が鍵とされています。
雇用就農であれば、毎月安定した収入を得ながら、プロの農家のもとで高度な栽培技術や経営ノウハウを学ぶことができます。
また、その地域での人間関係を構築する準備期間としても機能します。
数年間の経験を積んだ後に独立に向けて農地をマッチングしてもらうなど、ステップを踏むことで、離農のリスクを大幅に下げることが期待されます。
現実を直視し綿密な計画を立てることが重要です

農林水産省の最新データが示す通り、就農後3~5年で約2割の方が離農しているのは事実です。
その主な原因は、世帯農業所得が平均452万円にとどまるなどの収入不足、技術習得の難しさ、そして地域社会への適応問題です。
安定した農業経営を続けるためには、以下のポイントを押さえることが重要と考えられます。
- 多額の借金を避けたスモールスタートを徹底する
- 就農初期は副業を併用して収入基盤を安定させる
- 独立前に雇用就農で技術と地域ルールを学ぶ
確かな準備があなたの農業経営を成功へ導きます
農業は決して楽な仕事ではなく、自然を相手にするがゆえの厳しさがあります。離農率のデータを見ると不安になるかもしれませんが、それは事前の準備や情報収集が不足していた結果とも言えます。
日本の農業は高齢化が進み、基幹的農業従事者が著しく減少しているため、情熱を持った新たな担い手が強く求められています。
あなたがしっかりと現実を見据え、綿密な計画のもとで着実に一歩を踏み出せば、農業は生涯のやりがいとなる素晴らしい職業になるはずです。
まずは身近な農業体験や、自治体が主催する就農相談会に足を運んでみてはいかがでしょうか。
皆さんの農業への挑戦が、実りある豊かなものになることを心より応援しております。