新規就農の成功率はどのくらいなのか?

新規就農の成功率はどのくらいなのか?

農業を新たな仕事として始めたいと考えたとき、果たして自分は長く続けられるのだろうかと不安になることはありませんか。
自然を相手にする魅力的な職業である一方で、実際のところどれくらいの人が定着し、生計を立てられているのかは、非常に気になるところだと思われます。
2023年のデータでは、新規就農者数は43,460人と直近2年間で17%減少しており、担い手不足が深刻化しているという背景もあります。
この記事では、国が公表している調査結果をもとに、農業に新規参入した方の定着状況や、目標とする収入を得られている割合について客観的に解説します。
また、志半ばで農業から離れてしまう理由や、安定した経営を続けるための具体的な対策についても詳しくお伝えします。
この記事を読むことで、農業の世界へ踏み出す前に知っておくべき現実と、失敗を避けるための確かな道筋が見えてくるはずです。

新規参入者の約65%が定着する一方、収入目標の達成には壁があります

新規参入者の約65%が定着する一方、収入目標の達成には壁があります

新規就農の成功率を測る指標として、一般的に「離農率(農業を辞める割合)」が用いられます。
総務省が2019年に実施した調査データによると、新規就農研修生1,591人のうち、離農した方は564人(35.4%)でした。
つまり、定着して農業を続けている成功率は約64.6%ということになります。
5年以内に約3割の方が農業を離れているのが実態です。

しかし、単に続けているだけでなく、経営として成り立っているかどうかも重要な視点です。
同調査では、就農時の所得目標を達成している割合はわずか14.3%にとどまっていることが明らかになっています。
農業を続けることはできても、当初思い描いた収入を得て安定した経営を行うことは、非常にハードルが高いと言えます。

なぜ3割の人が農業を辞め、所得目標を達成できないのか

なぜ3割の人が農業を辞め、所得目標を達成できないのか

農業を長く続け、さらに十分な収入を得ることがこれほど難しいのには、明確な理由が存在します。
ここでは、初期のハードルと経営開始後の課題について詳しく解説します。

資金・農地・技術という3つの大きな壁

新規就農者が農業を辞める理由として、調査結果では主に以下の3つが挙げられています。

  • 農地の確保が困難(72.8%)
  • 資金の確保が困難(68.6%)
  • 営農技術の習得が不十分(57.7%)

農業を本格的に始めるためには、数百万円から数千万円にのぼる初期費用(土地代、農機具、ビニールハウスなどの設備投資)が必要とされます。
十分な資金計画がないまま見切り発車してしまうと、資金繰りがショートし、経営はすぐに立ち行かなくなります。
また、農地法などの規制により、実績のない新規参入者が条件の良い農地を借り入れ、あるいは購入することは容易ではありません。
さらに、気候や土壌に合わせた栽培技術は一朝一夕で身につくものではなく、初年度から想定通りの収穫量を得られないケースが多く見受けられます。

病害虫や経費の増加による収益圧迫

所得目標を達成できない要因としては、自然環境のリスクと経営上のコスト管理の難しさが挙げられます。
例えば、突発的な病害虫の被害や異常気象によって農作物が深刻な打撃を受け、出荷量が激減してしまう可能性があります。
また、売上を伸ばそうと安易に規模を拡大した結果、機械の維持費や肥料代、農薬代などの経費が想定以上に膨らみ、手元に残る利益が圧迫されることも少なくありません。
栽培技術の不足とコスト管理の甘さが、所得目標未達の大きな原因と考えられます。

安定した農業経営を実現するための3つの具体例

安定した農業経営を実現するための3つの具体例

厳しい現実がある一方で、しっかりと計画を立て、地域に根付いて成功している新規就農者の方も毎年約1万人いらっしゃいます。
ここでは、農業経営を安定させるための具体的なアプローチを3つ紹介します。

綿密な資金計画と支援制度のフル活用

自己資金だけで初期費用や当面の生活費をまかなうのは非常に困難です。
そのため、国や自治体の支援制度を積極的に活用することが不可欠です。
代表的なものとして、農林水産省が推進する「農業次世代人材投資資金(旧:青年就農給付金)」などがあります。
要件を満たせば、最長2年間にわたり年間最大150万円の補助金を受け取ることが可能です。
このような公的支援を利用しながら、初期投資を最小限に抑え、最低でも経営が軌道に乗るまでの数年間の運転資金と生活費を綿密にシミュレーションしておくことが重要です。

地域の支援機関や先輩農家との連携

条件の良い農地を確保し、地域に合った営農技術を身につけるためには、地域社会との信頼関係の構築が欠かせません。
まずは各自治体の新規就農支援窓口や農業委員会に足を運び、地域の情報を集めることが第一歩です。
また、農業法人に就職して従業員として働きながら技術を学ぶという選択肢もあります。
地域に根差した先輩農家さんのもとで研修を受けることで、実践的な栽培技術だけでなく、効率的な作業手順や、地主さんとのパイプ作りなど、独立時に直結する貴重な資産を得ることができます。

市場の需要を見据えた作物選定とリスク管理

単に「作りたい作物」を作るのではなく、「売れる作物」を見極めるマーケティングの視点が必要です。
地域の直売所で人気のある野菜や、近隣の飲食店が求めている特産品など、市場の需要をリサーチして作付計画を立てることが収益化への近道です。
また、病害虫や自然災害に対するリスク管理も徹底する必要があります。
複数の作物を組み合わせて栽培することで一つの作物が不作になった時のリスクを分散したり、持続可能な農業技術を取り入れることで、安定した収量とワークライフバランスの両立を目指すことが大切です。

事前準備と情報収集が成功への鍵を握ります

事前準備と情報収集が成功への鍵を握ります

今回の記事では、公的データに基づいた農業参入の現状について解説しました。
お伝えした内容の要点は以下の通りです。

  • 新規就農から5年以内の定着率(成功率)は約64.6%である
  • 一方で、目標とした所得を達成できている人は14.3%にとどまる
  • 離農の主な原因は、資金不足、農地の確保難、技術不足である
  • 成功のためには、支援制度の活用、地域との連携、マーケティングが必須である

農業は、思いつきや憧れだけで成功するほど簡単な世界ではありません。
しかし、確かな計画と準備があれば、一生の仕事として成り立つ可能性を十分に秘めています。

農業への第一歩を踏み出すために

農業の世界へ飛び込むことに、不安を感じるのは当然のことです。
まずは、ご自身の住む地域や就農希望地で開催されている農業研修や体験プログラムに参加してみてはいかがでしょうか。
実際に土に触れ、現場で働く農家の方々の生の声を聞くことで、インターネットのデータだけではわからない現実的な情報を得ることができます。
また、全国新規就農相談センターなどの公的な窓口を活用し、専門家に事業計画の相談に乗ってもらうことも強くお勧めします。
現在、農林水産省は「地域の活力創造プラン」において、40歳以下の若い農業者を増やす目標を掲げており、多様な支援策が用意されています。
焦らず、一つひとつの課題をクリアしながら、あなたらしい農業経営の形を見つけていってください。